主なスペック
- 延床面積 32.2坪
- 外壁 ガルバリウム鋼板 × 無垢杉板
- UA値 0.46 w/㎡K(2021年仕様)
- C値 0.18 ㎠/㎡
- 耐震等級3(認定取得)
- 太陽光発電 4.3kW搭載
設計コンセプトとエピソード
今回も土地探しからのお手伝いでしたが、設計含めてすべてのお打合せが極めてスムーズであったことが印象的なU様邸。
敷地は方位こそ良いのですが、傾斜のついた分譲地のため建物の配置計画が非常に難しく、そのため一段背の高い南側の隣家が落とす影からいかに逃げることができるかが設計の最大のキーポイントとなりました。日射シミュレーションを行なうと1階の窓からは冬の朝日がどうしても取得し難かったため、南東側に吹抜けをつくることを提案。これによって冬の朝、ダイニングの上からさんさんと日射を得ることができるようになりました。また、ただ採光用の吹抜けを作っただけでは芸がないので、ここに階段をもってくることで吹抜けの存在意義を強調し、デザイン上のアクセントにも活用しました。階段は一般的な既製品による造作階段でありながら、オープン手すりを採用することでこの間取りと相まっていかにも注文住宅らしいオリジナル感を演出できたと思います。余談ですが、世間にはあまりにも「意味のない吹抜け」が多すぎます。お客様の要望通りに設計していくとたいていは1階よりも2階のボリュームが小さくなるため、それを穴埋めするためだけに作ったような吹抜けは、このインフレ時代の住宅にはそぐわないと思います。吹抜けは延床面積には含まれませんが、施工には手間がかかるため当然その分家の値段は上がってしまうのですから。当社では今回のように明確な理由がない限り吹抜けを安易に提案することはしないようにしています。
外観は中央の窓を中心にシンメトリーに、かつガルバリウム外壁特有のシームレスさを活かしたデザインとしました。これを継ぎ目のある一般的な窯業系サイディングでやると、とてつもなくチープでダサい外観になってしまいます。また中央の窓から棟(屋根の中央)に向かって本物の杉板をアクセントに挿し、和モダンの雰囲気を強調しました。このお家のデザイン手法は著名建築家の飯塚豊先生の作風をオマージュしており、極めてシンプルでありながら非常に美しく、印象に残りやすいデザインであると思います。「カッコいい」ではなく「美しい」と形容すべきデザインです。
内装も非常に美しく、和室の板の間の材がそのままリビングに延びてきて、それがTV台になるという演出をしました。当然ここは大工製作による造作家具となるため、シート張りの既製品TV台とは比べものにならないほど高級感があります。またリビングは通常の木造住宅に比べて大きくスパンを飛ばして設計しており、梁にかかる負荷を分散するためにTV台横に化粧柱を配置しております。そしてこの化粧柱もこの和モダンの雰囲気を盛り上げるのに一役買っているのは十分に写真から伝わるかと思います。「金属の梁を用いることでスパンを大きく飛ばせる」という謳い文句のフランチャイズ系工法もありますが、断熱性においてのデメリットがあまりにも大きすぎるため、当社ではそういった工法は採用しておりません。