主なスペック
- 半平屋
- 延床面積 31.3坪
- UA値 0.48 w/㎡K(2021年前期仕様)
- C値 0.12 ㎠/㎡
- 耐震等級3(認定取得)
- 太陽光発電 4.3kW搭載
設計コンセプトとエピソード
土地探しからお手伝いさせていただいたN様ご夫婦でしたが、その土地探しはかなり紆余曲折がありました。
もともと平屋を希望されていたこともあり広めの敷地をお探しであったのですが、決定した敷地では純粋な平屋では冬にほとんど採光が得られないことが明らかだったため、子供部屋のみを2階にもっていき寝室やWICなどの主要素をすべて1階に配置した「完全1階完結型の2階建(=半平屋)」を提案しました。こうすることで隣家との間に十分な離隔距離を確保でき、冬の採光を最大化することができました。
このお家を設計した頃(2021年春ごろ)から徐々に流行の兆しがあった1階完結型のお家ですが、2022年ここにきて住宅業界の一大ブームとなりました。事実、2022年8月現在、弊社のお客様の約半数がこういった1階完結型のお家をご希望されております。1階完結型のお家のキモとなるのは、間取りと構造の整合性です。1階が大きく2階が小さくなる都合上、構造的に不安定になりやすく耐震性に問題が生じやすいのです。ここをどう対処するかが設計者の腕の良し悪しが如実に表れる部分でもあります。今回のプランでは単純に子供室のみを2階に配置してしまうと上下階の壁の位置に不整合が起きてしまったため(=直下率が悪い)、あえて吹抜けを設けて2階のボリュームを水増しすることで直下率を高めました。その結果、何の無理もなく耐震等級3を確保することができ、かつ吹抜けによって冬の日射取得量をさらに増やすこともできました。ただし吹抜けは夏の日射遮蔽を必ずセットで考える必要もあります。今回も軒の出の設計を入念に行ない、夏はしっかり日射遮蔽が効くようデザインしてあります。この施工例写真が撮られたのは8月上旬ですが、吹抜けの窓がきちんと影に覆われているのをご確認いただけると思います。
敷地南東側には深く屋根をかけたウッドデッキを設置しております。このウッドデッキありきで設計したお家であり、ここはいわゆる「中間領域」というもので、気候が良い時期には物干し場やセカンドリビング的に利用できる場所となります。写真にはまだ写っておりませんが、周囲からの視線を遮るためにこの後植栽を数本植える予定となっております。植樹後の写真が撮れなかったことが心残りです。
またこの頃から一定の完成を見つつあった当社独自の全館空調方式ですが、8月1日の炎天下に行なわれた見学会では終日に渡って2階ホールに設置した全館空調用エアコン(普通の10帖用エアコン)1台のみを稼働しての開催としました。補助エアコンなど一切稼働させることなく、お越しいただいたお客様全員に「涼しいですね!」と言っていただくことができました。同時に、このお家の延床面積が31.3坪であることに驚かれるお客様も多数いました。お引渡し数日後にお施主様にお会いした際も「今のところあの1台(2階ホールエアコン)だけで全然普通に過ごせています。むしろちょっと寒く感じられるときさえあります(笑)」との言葉もお聞きすることができました。しかしこれに満足することなく今なお改良を重ねております。UA値やC値などのスペックを重視する風潮が生まれてきていますが、実際にはそれに加えて適切な空調計画が必ずセットで必要になります。どれだけスペック値が良くても、断熱材が勝手に家を暖めたり冷やしたりしてくれることはありません。むしろ夏においては、適切な空調設計ができていない高断熱住宅の方が不快な室内環境をつくり出してしまうことさえあります。こういった空調計画において、当社には1日の長があると自負しております。